日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者の耐糖能と生命予後
板垣 晃之宮下 明子鈴木 孝臣大友 英一
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1995 年 32 巻 5 号 p. 358-361

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抄録

1980年から81年の2年間に老人ホーム在住者 (N=468) に50gOGTTを施行し, 各耐糖能別の生命予後を1994年3月31日まで観察した.
(1) 耐糖能は正常型が男女とも約40%, 境界型は男50%, 女52.5%, 糖尿病型は男10.4%, 女8.3%であった.
(2) 全症例の血糖値を男女で比較したが, 空腹時血糖 (FPG) は男が女に比し有意に高値であった (p<0.05).
(3) 生存率は女が男に比し有意 (p<0.001) に高かった.
(4) 男女での耐糖能別の生存率を比較したが, 男女とも正常型, 境界型, 糖尿病型で有意差を認めなかった.
(5) 検査時年齢を75歳未満, 75歳以上に分けて, 耐糖能別の生存率を比較したが有意差を認めなかった.
(6) 比例ハザードモデルにより性, 検査年齢, 空腹時血糖, Body Mass Index (BMI), 収縮期血圧, 拡張期血圧, 総コレステロール, 中性脂肪が生命予後に及ぼす影響をみると, 男性, 検査時の年齢が高齢, BMIの低いことが予後を悪化させる因子として考えられた.
以上の結果から, 高齢者の軽度の糖代謝障害 (境界型) は正常型の生命予後とは差異を認めず, 生理的な変化に近いものと考えられる. 糖尿病型も正常型や境界型と生存率に差を認めなかったが, 例数も少なく今回の結果からは即断することはできない.

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