日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
急性心筋梗塞患者の無症候性脳動脈狭窄病変
脳MR angiography による検討
上原 敏志田淵 正康林 孝俊銕 寛之
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1995 年 32 巻 5 号 p. 370-375

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抄録

急性心筋梗塞 (AMI) 発症時における無症候性脳動脈狭窄病変の合併頻度およびその程度を明らかにするために, AMI連続33症例に対して脳MR angiography を施行し, 頸部動脈 (頸部内頸動脈分岐部) および頭蓋内動脈 (頭蓋内内頸動脈, 中大脳動脈水平部, 脳底動脈) の狭窄病変について検討した.
以下の結果が得られた. (1) 25%以上の狭窄を病変とした時, AMI患者33例のうち頸部動脈病変は8例 (24.2%), 頭蓋内動脈病変は5例 (15.2%) に認められた. (2) 狭窄病変の大部分は軽度 (25~49%狭窄) だった, (3) 虚血性心疾患の既往を持たない対照群と比較すると, 頸部動脈病変の頻度はAMI群において有意に高かった (p<0.05). 一方, 頭蓋内動脈病変の頻度はAMI群で高いものの両群間で推計学的に有意差を認めなかった, (4) 頭蓋内動脈病変を認めるAMI患者は, 頭蓋内動脈病変を認めないAMI患者に比して平均年齢が有意に高かった (p<0.05).
今回の検討により, AMI患者では発症時すでに比較的軽度ではあるが頸部動脈病変が高率に存在することが明らかとなり, 頸部動脈硬化と冠動脈硬化との間に関連性があることが示唆された. 一方, 頭蓋内動脈病変は加齢とともに増加する傾向がみられ, 高齢のAMI患者では, 頸部動脈病変のみならず頭蓋内動脈病変の合併にも注意をする必要があると思われた.

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