日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者陳旧性心筋梗塞のβ遮断薬による心事故予防効果
石川 欽司金政 健濱 純吉小川 巌竹中 俊彦木村 彰男香取 瞭
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キーワード: 心筋梗塞, 心事故, β遮断薬
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1997 年 34 巻 4 号 p. 273-277

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抄録

β遮断薬は心事故予防に有効であるが, 徐脈, 房室ブロック, 心不全などの副作用を生ずることがあり, 特に高齢者では使用しにくいとされている. そこで当科にて加療した陳旧性心筋梗塞につきβ遮断薬を服用した高齢者群の心事故発生率を後向き (retrospective) 調査し, 有効性を検討した. 対象は陳旧性心筋梗塞1,169件, 発症時年齢60.2±11.4歳, 男925件, 女244件で, 平均観察期間は18.0±19.7カ月である. End point は心事故 (致死性及び非致死性再梗塞, 心不全死, 突然死) である. β遮断薬服用群653件では21件 (3.2%) に心事故がみられたが, 非服用群516件では39件 (7.6%) に心事故が発生し, 心事故は服用群で有意 (p<0.01, odds ratio 0.41: 95%信頼区間0.24~0.70) に低値であった. 年齢別に心事故発生率を服用, 非服用群で比較すると50歳未満ではそれぞれ4.1, 7.6%, 50~59歳3.0, 7.5%, 60~69歳4.3, 6.0%, 70歳以上0.8, 11.4% (p<0.01, odds ratio 0.10, 95%信頼限界0.02~0.52)であり, いずれの年齢層でもβ遮断薬服用群は非服用群より心事故発生率は低かった. 尚, β遮断薬の副作用によると思われる死亡はなかった. 以上より, β遮断薬は高齢者でも心事故予防に有効であると結論された.

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