日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
わが国の医師の卒後初期臨床研修プログラムに含まれる老人医療について
平成6年の指定基準改正時の調査
井上 剛輔津島 隆也溝口 環福原 美智子
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1997 年 34 巻 4 号 p. 292-297

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抄録

この研究は, 平成6年度から開始された医師の卒後初期臨床研修基準の改訂に伴う新しい研修プログラムに, 老人医療がどの程度含まれているかを調査したものである. 従来, 大学付属病院や, 厚生省から認可を受けた臨床研修病院に限定されていた医師の初期臨床研修の場が, 平成5年の研修プログラムの基準改訂で, 専門病院, 中小病院, 診療所, 保健所, 老人保健施設, 社会福祉施設にも拡大された. この新プログラムの臨床研修は, 平成6年度から開始されているが, その時点でどの程度老人医療が研修プログラムに含まれているかをアンケートで調査した. 対象は, 平成6年度に研修医を公募した大学病院以外の臨床研修病院261であり, 回答は213病院から寄せられた(回答率81.6%). その要点は以下のようである. (1) 臨床研修を, 病院単独で行っている場合 (A群) と, 他の研修施設を利用している場合 (B群) とに分けると, A群167病院, B群46病院であり, B群の研修施設には, 老人保健施設, 特別養護老人ホームも含まれていた. (2) 老人医療を配慮した研修プログラムは, A群の17病院, B群の12病院で開始されていた(全体の11.1%). (3) 老人医療研修プログラムの教育に当たっている科は, 主に内科, 精神科, リハビリテーション科であった. (4) 研修プログラム内容では, A群では訪問看護・医療, 入院患者の対応, B群では施設研修, 入院病棟での対応, デイ・ケアなどの他, とくに施設でのリハビリテーション的指導, 一般的ケアを重視していた. (5) 現在老人医療プログラムのない病院でも, A群の36病院, B群の14病院が予定していた(全体の19.1%). 医師の初期臨床研修はほぼ全科の臨床医のプライマリ・ケアの技術習得の期間であるが, その研修プログラムに老人医療的側面, とくに各種老人施設での研修を組み入れることは, 意義が大きいと思われる.

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