日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
加齢と頸動脈超音波断層所見
木暮 大嗣岩本 俊彦高崎 優
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1997 年 34 巻 7 号 p. 560-568

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抄録

わが国における頸動脈アテローム硬化の頻度と加齢との関係を知る目的で, 40歳代から70歳代までの健診センター受診者270名を対象として7.5MHzBモード超音波断層法検査を施行し, 得られた成績を加速度脈波 (APG) 指数, 各脂質濃度とともに検討した. 対象は40歳代84名, 50歳代89名, 60歳代67名, 70歳代30名で, 頸動脈病変は閉塞, 限局性隆起性病変 (plaque) を以て陽性とした. plaque [内膜-中膜複合体の厚み (IMT) が2.1mm以上の隆起性病変] は形態より2型, 輝度より3型に各々分類して検討し, またIMTは任意の2点で計測したIMTの和をIMT2として表わした. APG指数はAPG波形上のa波, b波, c波, d波について各波の基線までの距離より (-b+c+d)/aで表わした. 頸動脈病変は40歳代の5%, 50歳代の7%にみられ, 60歳代で24%と急増した. 頸動脈病変は全て plaque であった. IMT2は経年的に増高したが, plaque の有無や性別による有意差はみられず, 加齢のみがIMT2増高と有意な相関を示した. またAPG指数は加齢とともに直線的に低下したが, 頸動脈病変の有無, IMT2増高との有意な相関は認められなかった. 以上より60歳以上は plaque 形成の危険因子であり, 60歳以降では他に危険因子がなくても頸動脈の注意深い観察が必要であると考えられた. 一方IMTの増高, APG指数の低下はアテローム硬化とは異なる病態を反映していることが示唆された.

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