日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
糖尿病発症遺伝子のポジショナルクローニング
池上 博司上田 裕紀川口 義彦荻原 俊男
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1998 年 35 巻 4 号 p. 290-293

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抄録

インスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) の遺伝解析において大きな障害となっているのがNIDDMの疾患としての不均一性および遺伝的不均一性である. 本研究ではこの点を克服するため, 遺伝的に均一な自然発症NIDDMモデル動物を用いて疾患感受性遺伝子のポジショナルクローニングを試みた. モデル動物としてNSYマウスを用いた. NSYマウスは年齢依存性にNIDDMを自然発症し, 48週齢における累積糖尿病発症率は雄98%, 雌31%であった. NSYマウスとコントロールマウス (C3H/He) の正逆交配実験を施行し, F1マウスにおける耐糖能, 基礎インスリン値, インスリン分泌反応, 体格指数 (BMI), 精巣上体脂肪量をNSYおよびコントロールと比較した結果, これらの各表現型は異なる遺伝様式をとることが示された. F1同士を交配したF2マウスを対象に, 糖尿病に関連する表現型とゲノム上にほぼ均等に配置したマイクロサテライトマーカーとの連鎖解析をMAPMAKER/QTLを用いて行った結果, NSYマウスの耐糖能を規定する遺伝子座が少なくとも3つの異なる染色体領域にマップされた. これらの遺伝子のクローニングは, ヒトNIDDMの遺伝・発症機序の解明に大きく寄与することが期待される.

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© 社団法人 日本老年医学会
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