日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者における反復した顕性誤嚥症例の臨床的研究
桂 秀樹山田 浩一木田 厚瑞
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1998 年 35 巻 5 号 p. 363-366

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抄録

老年者の反復した顕性誤嚥症例38例につき背景因子, 予後を検討した. 対象症例は男25例, 女13例, 平均年齢81.4歳. 基礎疾患では, 脳血管障害後遺症などの中枢神経疾患が89.5%を占め, 中等度以上の痴呆を63.2%に認めた. いずれもADLの著しい低下を伴っていた. 観察期間内に嚥下性肺炎あるいは気管支炎を二回以上発症した症例は79%であった. 同期間中の入院回数は平均2.3回であり, 84.2%が死亡し, 全症例の50%生存期間は約2年間であった. 全症例の65.6%が肺炎, 呼吸不全あるいは窒息により死亡した. 誤嚥予防として胃瘻造設が16例になされ, 胃瘻造設により50%生存期間の延長が認められたが肺炎の実質的予防とはならなかった.
以上より以下の結論を得た. 1) 反復した顕性誤嚥症例は脳血管障害後遺症, 痴呆, ADLの著しい低下を背景に生じることが多く予後不良である. 2) 胃瘻造設により延命効果が期待できるが肺炎は必ずしも予防できない.

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