日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
動脈硬化と遺伝子多型
中島 敏晶江見 充
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1999 年 36 巻 4 号 p. 229-233

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抄録

動脈硬化は極めて多数の要因の集積により発症するものであり, 食事, 喫煙といった要因に加え, 遺伝素因も重要な因子となる. 本稿では動脈硬化の発症に深く関連する脂質代謝, リポ蛋白代謝に異常をきたす遺伝子変異, 多型について概説する. 今回とりあげたのはリポ蛋白リパーゼ, 肝性トリグリセリドリパーゼ, レシチンコレステロールアシル転換酵素, LDL受容体およびアポ蛋白遺伝子の遺伝子変異, 多型であり, 各々の遺伝子において nonsense 変異, missense 変異, 挿入/欠失変異および splicing 変異など数多くの変異, 多型が報告されている. また, アポ蛋白AI-CII-AIV cluster 領域の Xmn I多型と家族性混合型高脂血症との関連などのように蛋白の機能異常は明らかではないが, 特別な allele と高脂血症の関連についても多くの報告がある. しかしながら遺伝子異常が解明された部分は僅かにすぎない. 今後, 多型の解析が進み, 複数の遺伝子の相互作用や遺伝子の重積効果が明らかになることが期待される.

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