抄録
大都市部に居住する在宅高齢者814名について, 1991年に行われた初回調査での訪問面接聞き取り調査から得られたアルコール摂取 (飲酒) 状況と, その後の4年間の追跡調査による老研式活動能力指標によって現わされる高次の生活機能あるいは自立の変化と, その関連要因についての分析を行なった.
その結果, 初回調査において, 飲酒者頻度は年齢とともにほぼ直線的に減少しており, また飲酒者におけるアルコール飲料で最も多いのはビールであり, 1日の平均飲酒量 (アルコール換算) は男性約41g, 女性約24gであった.
さらに, 4年間の追跡調査により, 73.3%の対象者が分析された. その結果,「飲酒継続」,「飲酒中止」あるいは「(以前より) 非飲酒」などのカテゴリーにおける老研式活動能力指標総得点で示される高次生活機能の変化では,「飲酒中止」者でのその得点低下が最も大きく, 次いで「(以前より) 非飲酒」者となり, いずれも「飲酒継続」者に比べ有意な低下が示された.
以上のことから, 高齢期における適量飲酒はその後の生活機能の維持あるいは自立に対し必ずしも悪い影響を及ぼすものではないことが示唆された.