日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者の認知機能障害の検討
Cognitive Abilities Screening Instrument (CASI) による評価
山田 美智子三森 康世佐々木 英夫池田 順子中村 重信児玉 和紀
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2000 年 37 巻 1 号 p. 56-62

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抄録

高齢者における認知機能を評価する目的で, 著者らを含む日米の研究者によって, 長谷川式簡易知能評価スクリーニングテストやMMSE等の従来の神経心理テストをもとに Cognitive Abilities Screening Instrument (CASI) が開発された. 放射線影響研究所の成人健康調査集団の中から広島市在住の60歳以上の対象者2052人について, CASIを用いて認知機能を評価した. 神経学的診察, 介護者への問診調査 (IQCODE) などに基づき, DSM-III-Rの診断基準に準拠して判定された痴呆は93人で, 非痴呆は1959人であった. 多変量回帰分析による解析を行った結果, CASIの総得点は年齢が若く, 教育年数が多いほど高かった. 年齢階級が高いほど総得点の低下の勾配が急であり, さらに教育年数が少ない方が年齢に伴う総得点の低下の勾配が急であった. 女性では男性に比べ年齢の増加に伴うスコア低下の傾きが急であった. さらにCASIの項目を認知機能領域で分類した. 認知機能領域毎の多変量分析でも年齢や教育歴の影響が明らかであった. 痴呆を除いた対象者について年齢の影響の大きかった認知機能領域は時間の見当識, 短期記憶, 言葉の流暢さであった. また, 敏感度や特異度の値が大きかった時間の見当識, 短期記憶, 言葉の流暢さが痴呆判定の上で有効性の高い領域であった.

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