日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者視力障害の臨床
増田 寛次郎
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2000 年 37 巻 4 号 p. 261-264

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抄録
視覚は情報の取り入れ口として最も大きな, また重要, 正確なものである. 特に高齢者にとっては, QOL (quality of life) の上からも最も重要な感覚である. この視覚の障害は高齢者の日常生活に直ちに深刻な影響をおよぼす.
高齢者の視覚を損なう疾患としては, 白内障, 糖尿病網膜症, 緑内障, 加齢黄斑変性症, 網膜剥離, 眼底出血等があげられる. それぞれの疾患の特徴的症状および治療法について述べる. 白内障は地球上の高齢者の視覚障害病名の最も多いもので, 次いで我が国では糖尿病網膜症, 緑内障, 加齢黄斑変性症, 眼底出血, 網膜剥離が続く.
白内障の治療としては, 超音波白内障乳化吸引術に眼内レンズ挿入術が行われている. 糖尿病網膜症は全身的な血糖コントロールが最も大切で, 内科専門医との密接な連絡をとりながらの治療が必要である. 緑内障のうち正常眼圧緑内障は最も頻度が高く, 眼圧は正常範囲内にあるために発見がどうしても遅くなりがちで自覚症状にきづいたときには症状としてはそうとう進行している場合が多い. 早期発見が重要である. 加齢黄斑変性症は最近急激に多くなってきた疾患である. 視野の中心部の視覚が障害されるので初期から自覚されるが視力障害度は強い. 網膜剥離の前兆として飛蚊症があり, その時点で散瞳して眼底を精査すると, 網膜に裂孔をみることが多い. 網膜剥離になっていない時に発見できれば光凝固により裂孔を閉鎖して網膜剥離を予防することができる. 眼底出血も良く遭遇する高齢者の疾患である. 基礎疾患に高血圧症や動脈硬化症がある場合が多い.
高齢者の視覚障害原因疾患には早期に発見できればその後の視覚を十分保ち得るものも多く, 定期的な眼科的検査が必要である.
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