日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
医学生に対する「高齢者の終末期医療に関する問題」についての意識調査
質的分析法を用いた意識構造のモデル
益田 雄一郎服部 文子茂木 七香内藤 通孝井口 昭久植村 和正
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2001 年 38 巻 2 号 p. 212-217

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抄録

我々は終末期医療における医師-患者関係の側面から老年医学教育のあり方について考える端緒として, 医学生に対する「高齢者の終末期医療に関する問題」についての意識調査を通じて, かかる問題に関する医学生の意識構造を観察することを本研究の目的とした. 対象者は1999年度の名古屋大学医学部5年生全員 (95人) とし, 1週間の老年医学講座の実習を受けた学生に対して, 実習の最終日に半構造的質問紙を用いた意識調査を実施した.
その結果, まず一般の患者の終末期医療の問題と高齢者の終末期医療の問題を62% (59人) の医学生が異質な問題として, 高齢者の終末期医療の特異性を指摘していた. 次いで病名告知については, 45% (43人)の医学生が原則として賛成とし, 51% (48人) が個別的対応の必要性を指摘していた. そして病名告知についての年齢への配慮に関して, 58% (55人) の医学生がその必要性を指摘したが, 22% (21人) はその必要性がないと答えた. さらには終末期における延命治療についての事前指示書 (アドヴァンス・ディレクティブ) の是非ついては, 55% (52人) の医学生が肯定的に捉えていたが, 態度を明確にしない学生も26% (24人) に上った. 自由記述により得られたデータは質的研究法を用いて分析し,「高齢者の終末期医療」に関する意識構造のモデルを作成したが, 1) 医師-患者関係, 2) 終末期医療の方策といった問題についての客観的立場からの意見の表出といった特徴を持つ, 個人の意識の関係性が明らかになった. また少数ながら感情的・直感的な意見の表出も見られた.
今回の研究結果は, 今後の老年医学教育のなかで, 終末期医療に関する医療倫理学的なテーマの重要性を認識させるものであり, 学生に対する系統的な講義や実習の必要性を示唆するものであった.

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