日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年2型糖尿病患者の心・脳血管障害発症に及ぼす高Lp (a) 血症の影響について
4年間の追跡調査
鈴木 達也大庭 建三猪狩 吉雅松村 典昭犬塚 有紀木川 好章網代 由美子岡崎 恭次中野 博司妻鳥 昌平
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 38 巻 4 号 p. 507-513

詳細
抄録

2型老年糖尿病患者において, 高Lp (a)血症が虚血性心疾患および穿通枝系脳梗塞 (脳梗塞) の発症に及ぼす影響を検討する目的で, 4年間の経年観察を行った. 対象は60歳以上の2型糖尿病患者158名 (男性83名, 女性75名) で, 観察開始時点での虚血性心疾患および脳梗塞の合併の有無別に, 脳梗塞非既往群, 脳梗塞既往群, 虚血性心疾患非既往群および虚血性心疾患既往群の4群に分類した. それぞれの群について, 観察開始時の血清Lp (a) 値により20mg/dl以上の高Lp (a) 血症群と20mg/dl未満の正Lp (a) 血症群の2群に分類し, その2群間における虚血性心疾患および脳梗塞の発症率を Kaplan-Meier の生存曲線法を用いて比較検討した. 虚血性心疾患は心電図および血液生化学的検査にて, 脳梗塞は頭部CTにて診断した. その結果, 虚血性心疾患の発症率は, 虚血性心疾患非既往群においては高Lp (a) 血症群が正Lp (a) 血症群に比し有意に高率であったが (p<0.001 log-rank test), 虚血性心疾患既往群では両群間の再発率に有意差はなかった. 脳梗塞の発症率は, 脳梗塞非既往群および脳梗塞既往群のいずれの群も正Lp (a) 血症群と高Lp (a) 血症群の2群間に有意差はなかった. 多重ロジスティック回帰分析では, 虚血性心疾患の発症については血清Lp (a), 高脂血症, 虚血性心疾患の既往がそれぞれ独立した危険因子であり, 脳梗塞の発症については高血圧, 高脂血症, 脳梗塞の既往がそれぞれ独立した危険因子であった.
以上より老年2型糖尿病患者についての経年観察の結果では, 血清Lp (a) は虚血性心疾患の初発に対しての独立した危険因子であったが, 虚血性心疾患の再発および穿通枝系脳梗塞の危険因子ではなかった.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top