日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
非手術的治療により緩解しえた高齢者左主幹部急性冠症候群の4例
金剛寺 謙榊原 雅義三上 大志青柳 秀史山内 正博佐々木 俊雄三宅 良彦村山 正博
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2001 年 38 巻 5 号 p. 682-688

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抄録

左冠動脈主幹部の急性冠動脈症候群を来たし, percutaneous transluminal coronary angioplasty (以下PTCAと略す) を含む非手術的治療を行い, 軽快した80歳以上の高齢者4例を経験した. 症例1は, 左心不全を伴う急性心筋梗塞例で左冠動脈主幹部入口部に90%狭窄を認めた. ステント植え込みを行い心機能の改善を認めた. 症例2は, 左冠動脈主幹部に haziness を伴う実測65.5%の狭窄を認めた. 大動脈内バルーンパンピングを挿入し, 翌日の造影では haziness が消失した. 1カ月後には狭窄率が21.5%と減少しており, 内服加療のみで経過良好である. 症例3は, 右冠動脈#1と#4AVに90%の狭窄を認め, 左冠動脈は, 左冠動脈主幹部に90%, #7にも90%の狭窄を認め, #13は完全閉塞であった. 多発性脳梗塞と上行大動脈の高度石灰化を認めたため, PTCAによる治療を選択した. #1にステント留置と#4AVにバルーン拡張を行った後, 左冠動脈主幹部から左前下行枝にかけてステント留置を行った. 初期成功は得られたが, 78病日に重症不整脈にて死亡した. 症例4は, 左冠動脈に左冠動脈主幹部99%, #7から#8に瀰漫性の75%狭窄を認めた. 左前下行枝に瀰漫性病変を認めるため冠動脈バイパス術は困難と考え, 左冠動脈主幹部のみに対してステント留置を行い, 第11病日に退院可能であった. 4例ともPTCAを含む非手術的治療により良好な初期成績を得ることができた. しかし長期予期の面では症例ごとの適切な治療方針の決定が重要と考えられた.

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