日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
ブロムペリドールと塩酸ドネペジルの併用投与によって悪性症候群を呈したレビー小体型痴呆と考えられる1例
植木 昭紀岩堂 仁美眞城 英孝守田 嘉男
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2001 年 38 巻 6 号 p. 822-824

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抄録

幻視, 妄想に対して抗精神病薬を投与し塩酸ドネペジルを追加したところ, 錐体外路症状の増悪, 悪性症候群を発症したレビー小体型痴呆を経験し両者の併用は慎重に行うべきと考えられた. 症例は68歳の男性で67歳より具体的な生々しい幻視とそれに関連する妄想がありブロムペリドールを12mgまで投与し, アルツハイマー型痴呆が疑われたため塩酸ドネペジル5mgを追加した. 1週間後にはパーキンソン症状が増悪し, 1カ月後, 極端な前屈姿勢のため眼瞼や前頚部の浮腫, 低蛋白血症がみられ, 1カ月半後, 悪性症候群が出現した. 薬剤の中止, 輸液, 経管栄養により悪性症候群は軽快したが, 薬剤の中止から1カ月後もパーキンソン症状は残りレボドパの投与により軽減した. しかし幻視が再燃, 妄想は系統化し, 認知機能障害は悪化した. 錐体外路症状の増悪, 悪性症候群の発症の理由として低栄養に加えて抗精神病薬と塩酸ドネペジルの併用が関与したものと推察された.

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