平成12年4月から開始された介護保険制度は, 今後の高齢者介護に新たな一歩を開いた. この介護保険制度に期待されているのは在宅ケアサービス, 施設ケアサービスの量的拡充と, 専門的ケアの質的向上である. 日本老年医学会高齢者介護システム検討委員会では, 後者について委員会としての提言をおこなうべく75項目からなる「介護の質を計る物差し」を取りまとめた. この提言の意義と実用化への展望を検討するため日本老年医学会教育認定施設225施設, 全国老人保健施設協会400施設にアンケート調査を行い, 平成13年5月末日段階までに回答を得た276通 (回収率それぞれ37%, 47%), および独自に調査を行った名古屋大医学部老年科関連施設94通, 合計370通について分析を試みた.
その結果, 協力頂いた施設の種類 (介護老人福祉施設 (以下特養ホーム), 介護老人保健施設 (以下老健施設), 介護療養型医療施設 (以下療養型医療施設), 一般病院) によって施設規模に大きな違いが見られ, 前二者は比較的小規模で, 後二者は中, 大規模であった. これらの施設で行われている介護サービスは, 介護保険の「施設サービス」の位置付けに合致した施設種類ごとの特徴がみられた. 特養ホームや老健施設では, ケアの方針や理念が明確にされているところが多く, 生活ケア, 娯楽や献立へ配慮している姿勢がうかがわれた. 療養型医療施設では要介護度が高く, 医療ニーズの高い高齢者ケアを行っている実態が示された.
これらの調査結果を通して他施設の平均像を知ることにより, それぞれの施設の特性に合わせた介護サービスの点検, 向上に役立つのではないかと考える. また,「介護サービス」の量を点検, 評価するためには, それぞれの施設の種類ごとに独自の物差しを作る必要があると思われた.