日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
造血幹細胞を用いた再生医療の展望
赤司 浩一
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2002 年 39 巻 3 号 p. 246-252

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抄録

造血は, 全骨髄細胞の約0.01%程度を占める造血幹細胞によって維持されている. 造血幹細胞は, 自己複製しながらすべての血液細胞や免疫担当細胞に分化できる. したがって造血幹細胞移植術は, 造血系および免疫系の再生術であると考えることができる. 支持療法の改良によって安全性が向上したことにより, 造血幹細胞移植術の適応範囲は, 造血器悪性腫瘍から造血器良性疾患, さらに自己免疫疾患へと広がっている. さらに最近になって, マウス造血幹細胞分画に属する細胞が, 非造血系臓器にも分化することが報告された. このことは, 造血幹細胞移植術が造血, 免疫系のみならず非造血系臓器の再生医学にも貢献できる可能性を示唆している. 骨髄を用いた非造血系臓器の再生を実現するためには, 非造血系臓器に分化する骨髄中の幹細胞を同定し, 臓器の境界を越えた分化を可能にする転写制御メカニズム等を詳細に検討していく必要がある.

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