日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳卒中の発生要因の分析
一次判別関数による人間ドック検診成績の予後研究
高橋 春雄岩塚 徹水野 嘉子安井 昭二横井 正史岡島 光治
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1967 年 4 巻 5 号 p. 237-245

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抄録

外来人間ドック予後調査の結果, 18名が脳卒中発作を起こしたが, ドック受診時検査所見から脳卒中をおこす可能性を予知できれば非常に意義あると考え, 電子計算機を使用し発作群と対照群の比較検討を行なった.
方法として, 1) 多項目にわたる検査成績を総合判定しなければならない. 2) 検査成績の情報に連続量が多い. 3) 予後良悪の2群の判別でよいという条件から判別関数法を採用した.
対象は愛知県中央健康相談所で外来ドック受診後, 脳卒中発作を起こした18例中15例とその15例と同年令のものを発作を起こしていない群から at random に各3名ずつ選び判別式算定に使用した. 次いで判別式算定に使用しなかった脳卒中発作例3例と非発作例6例について判別式の普遍性の検討を行なった.
判別に使用する検査項目は, 比較的関連があると思われる12項目についてあらかじめ絶対的重みを計算し上位10項目を採用した. 症例数があまり多くないので項目数を減らす検討を加え, 心電図所見と眼底所見は夫々独立として扱い, 血圧, 網膜中心動脈圧および空腹時血糖値, 血清総コレステロール値, フィシュベルク尿濃縮試験値, 尿タンパクはそれぞれ一括し4項目にまとめた.
判別式は, F=0.00058(0.020X1+0.066X2-0.035X3+0.020X4)+0.074X5+0.097X6+0.00082(2.04X7+0.25X8+0.037X9+0.011X10)+0.023X11X1: 収縮期血圧, X2: 拡張期血圧, X3: 最高網膜中心動脈圧, X4: 最低網膜中心動脈圧, X5: 眼底所見, X6: 心電図所見, X7: 尿タンパク, X8: フィシュベルグ尿濃縮試験値, X9: 室腹時血糖値, X10: 血清総コレステロール値, X11: 経過年数〕となった.
脳卒中発作群の判別値の平均は13.84, 分散2.142, 非発作群の判別値の平均は10.69, 分散1.752で, 判別点の値は11.80であった.
さらに片側危険率0.05の棄却限界を求めたところ, 脳卒中発作群の棄却下限は9.96, 非発作群の棄却上限は13.66であった. 非発作群の中2例のみが棄却上限を越えたが, 発作起こす可能性を経過観察していきたい. 今後脳卒中発作を起こした例により判別式の応用を試み, 予後判定の自動化の研究のいとぐちとして活用したい.

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