日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
24時間総心拍数8万拍未満の入院徐脈症例における老年者と若年者の臨床的比較検討
田崎 洋文植山 千秋入田 昭子宮川 明彦北野 幸英早野 元信磯本 正二郎瀬戸 信二矢野 捷介
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2003 年 40 巻 3 号 p. 254-260

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抄録

徐脈症例における24時間総心拍数 (THB) の研究は少なく, 高齢者における徐脈の疫学や意義については尚不明である. 徐脈症例においてTHBの年齢による相違を明らかにする目的で, 当循環器内科において連続して記録された Holter 心電図7,687例から, 入院中でTHBが8万拍以下の徐脈症例で, 重複を除いた303例を対象として臨床的検討を行った. 対象の年齢分布, 徐脈の副作用をもつ薬剤投与の有無, 基礎疾患について示し, さらに薬剤投与の有無別, 基礎疾患別にTHBについて老年者と若年者で比較検討した. 年齢については65~70歳に大きなピークを持つ集団と15~20歳に小さなピークを持つ集団を認めた. これらの年齢分布より65歳未満の若年群 (194例; 平均49.1歳) と65歳以上の老年群 (109例; 平均71.0の歳) に分け, 両群間で比較検討した. まず, 薬剤 [-] 例では, 老年群と若年群の間でTHBの平均値, 分布状況に有意差は認めなかった. これらの基礎疾患には徐脈性不整脈である洞性徐脈・洞不全症候群およびII度以上の房室ブロックの他, QT延長症候群, 虚血性心疾患, 心筋症, 弁膜症, その他を認めたが, 基礎疾患別の検討でもTHBの平均値および分布状況に両群間で有意差を認めなかった. 一方, 薬剤 [+] 例でも薬剤 [-] 例とほぼ同様の結果であった. なお, 徐脈性不整脈のTHBは他疾患と異なった分布を示し結果の判定に注意を要すると考えられた.

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