日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者における「閉じこもり」
安村 誠司
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2003 年 40 巻 5 号 p. 470-472

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抄録

高齢者における「閉じこもり」の概念は1980年代初頭に提唱したものである. しかし,「閉じこもり」の概念・定義に関して, 統一されておらず, また, 実証研究もほとんどない. 我々は外出頻度から見た「閉じこもり」のスクリーニング方法を開発し,「閉じこもり」の実態を明らかにしてきた. 今回,「閉じこもり」高齢者の主観的QOLを向上させ,「閉じこもり」解消につなげる介入プログラムを作成・実施し, 評価した. 2001年福島県某市A地区在住の70歳以上の全住民 (6月1日現在614人) のうち, 介護保険利用者は除いた人を対象に, 会場面接と訪問調査を実施し, 546名のデータが得られた. 訪問調査対象者253名のうち,「閉じこもり」と判定された人が74名であった. さらに, 痴呆がある人, 聴覚に障害がある人を除いた結果, 64名が介入研究の対象となった. この対象者を介入群と対照群との2群に無作為に分け, 週1回, 計6回の介入を2001年11月から12月にかけて行った. 介入の内容は心理療法の一つであるライフレビューと健康情報の提供で60分に設定した. 対照群は経過観察した. 身体的変数, 心理的変数, 社会的変数について, 事前評価時と比較して事後評価時に状態が改善・維持したものの割合を介入群と対照群で比較した. 生活体力のみ, 有意差が認められた. 介入群における脱落群は継続群に比べて, 男性が多く, 自己効力感が低かった. 本プログラムの有効性を明らかにするために, 対象地区, 対象者を増やして, 介入を行う必要があると考えられた.

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