日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
名古屋市保健所における痴呆介護予防事業参加者の意識調査
藤城 弘樹梅垣 宏行鈴木 裕介中村 了平川 仁尚井口 昭久
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2005 年 42 巻 3 号 p. 340-345

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抄録

近年, 新しい成年後見制度の施行, グループホームの増加, アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の登場など, 痴呆性高齢者を取り巻く環境は徐々に整備されつつある. 一方, 公的介護保険導入と時期を同じくして, 厚生労働省による痴呆介護予防事業が各地で行われている. 今回, 2003年度名古屋市内の保健所で行われた痴呆予防教室の参加者347人 (平均71歳) を対象にアンケート調査を実施した. 調査内容は, 調査対象者の(1)属性, (2)痴呆に関する知識, (3)痴呆告知に対する意識, (4)自らの痴呆発症への不安感である. 同時に保健師による Mini-mental State Examination (MMSE) が施行され, 平均27.2点であった. 痴呆に関する知識では, 薬物の存在について「ある」が18%, 成年後見制度を「知っている」が14%, 痴呆性高齢者が生活可能な環境を問う項目 (複数選択) において, 在宅39%, 病院43%, 施設62%, グループホーム25%がそれぞれ選択された. 全体の74%が自分への告知を希望し, 71%が痴呆に対し不安を抱いていていた. 70歳以上と69歳以下の年齢別による検討では, MMSEの平均点で有意差はなく, 23点以下の割合において, 70歳以上が10.1%と69歳以下の3.7%に比べ有意に高かった (p<0.05). また, 痴呆性高齢者の生活環境についての知識において, 69歳以下では, 在宅48.8%, グループホーム31.0%が選択されたのに対して, 70歳以上では, それぞれ33.6%と20.6%と選択率が有意に低く (p<0.05), より高齢者において知識が乏しかった. 一方で70歳以上では痴呆に対する不安感が強かった (p<0.05) が, 告知希望について有意差は認めなかった. 痴呆への関心が高い痴呆介護予防事業参加者であるにもかかわらず, 痴呆に関する知識が高くないことが明らかとなり, 知識の啓蒙の必要性が示唆された.

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