日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
要介護と残存歯に関する疫学研究
馬場 みちえ畝 博
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2005 年 42 巻 3 号 p. 353-359

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抄録

本研究では要介護と残存歯数との関連を明らかにするために, 要介護者と対照者の残存歯数について比較検討した.
対象は福岡県Y町の住民で, 介護保険の要介護度4と5に認定されている高齢者62人を要介護者群とした. 要介護者群と性・年齢 (±1歳以内) をマッチさせて, 1:1の割合で要介護認定を受けていない高齢者から無作為に62人を抽出し対照者群とした.
調査方法は, 保健師が面接方式で聞き取り調査を行った. 調査内容は要介護状態になった原因疾患, 治療歴, 生活習慣, 要介護期間, 残存歯数であった. 残存歯数については保健師が高齢者の口腔内観察を行い確認した.
平均残存歯数は, 要介護者群が3.7本, 対照者群が9.1本で有意差がみられた. 多変量解析の結果, 要介護に対するオッズ比は, 残存歯数が20本以上の者を reference とした時, 10~19本の者では7.03 (95%信頼区間1.15~42.85), 1~9本の者では15.61 (2.89~84.26), 0本の者では15.11 (2.84~80.44) であった.
年齢階級別に要介護者群と対照者群の残存歯数の差をみると, 要介護者群の方が対照者群より, 65~69歳では約14本, 70~79歳では約12本少なく有意差がみられた. しかし, 80歳以上では有意な差はみられなかった.
結論として, これらの結果から, 残存歯数の少ない者では要介護になるリスクが高くなることが示唆された. また, 要介護になるリスクは中壮年期の比較的若い時期に歯牙喪失を起こし, 残存歯数が減少した者に顕著であると考えられた.

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