日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
寝たきり予防ガイドライン作成の背景と課題
大河内 二郎
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2006 年 43 巻 2 号 p. 203-206

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抄録

目的: 寝たきり予防ガイドラインを作成する際に注意すべき点について, 長期コホート研究の結果から検討した. 方法: 対象は1996年に書面にて同意を得た愛媛県大三島町 (高齢化率40%) に在住の全高齢者である. そのうち機能障害を認めない1,560名の機能評価を2002年までの7年間行った. 高齢者の機能評価は高齢者イラストつきタイプ分類により民生委員が行った. また高齢者の慢性疾患の有無について2003年2月にアンケート調査を行った. TAIの結果を点数化し, Disability index とした. さらにその点数から機能障害を自立, 軽度障害および重度障害に区分し, 軽度障害者数および重度障害者数の変化と発生率 (Incidence) および, 多項ロジスティック回帰モデルにより軽度および重度障害と関連のある慢性疾患を検討した. 結果: 1996年に機能障害を認めなかった1,560名 (男性40%, 平均年齢: 男性73.0歳, 女性73.6歳) を7年間追跡した結果, 2002年における軽度障害の割合は, 男性より女性で高かった (10%対22%). これに対し重度障害の割合は男性3.4%, 女性4.2%であった. 一方死亡によるコホートからの脱落は, 男性26%, 女性13%であった. 軽度障害の新規発生は, 毎年増加傾向を示し, 男性より女性が高かった. 7年後の死亡, 入所, 不明を除く1,067名の多項ロジスティック回帰分析の結果, 男性では, 年齢, 脳血管障害および悪性腫瘍が, 女性では年齢, 慢性関節疾患, 糖尿病がそれぞれ軽度障害に関係していた. 一方重度機能障害と関係していた因子は男性では年齢, 脳血管障害, 女性では年齢, 慢性関節障害と脳血管障害であった. 結論: 高齢者のねたきり予防ガイドラインの作成においては, 高齢者の衰退過程の段階および性差を考慮する必要があると考えられた.

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