日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
幹細胞移植による神経再生医療
高橋 淳
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2006 年 43 巻 3 号 p. 330-333

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抄録

高齢者にみられる神経難病の一つとしてパーキンソン病が挙げられ, 欧米では脱落した神経の補充療法として胎児中脳黒質細胞移植が行われている. 近年行われた二重盲験臨床試験によると軽中等症の症例に対して移植効果が認められたが, 一部の症例ではジスキネジアの副作用がみられるなど細胞移植療法にはまだまだ改善が必要である. 最近, 胎児中脳黒質細胞に代わる移植細胞として神経幹細胞や胚性幹細胞 (ES細胞) が注目されている. 我々がヒト胎児由来神経幹細胞およびカニクイザルES細胞からのドーパミン産生神経誘導を試みたところ, どちらからもドーパミン産生神経の誘導が可能であったが分化効率では後者が勝った. さらに後者由来のドーパミン産生神経前駆細胞をカニクイザルパーキンソン病モデル脳に移植したところ, 短期経過観察ではあるが神経症状の改善が認められた. これらの結果を紹介し, パーキンソン病に対する幹細胞移植の現状と展望を述べる.

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