日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
地域在住要介護高齢者の低栄養リスクに関連する要因について
高橋 龍太郎
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2006 年 43 巻 3 号 p. 375-382

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抄録

目的: 地域在住虚弱・要介護高齢者の低栄養リスクを評価するため, 米国で開発されたチェックリスト Nutrition Screening Initiative (NSI) の日本語版を作成して, 心身機能や介護関係と低栄養リスクとの関係を探る. 方法: 東京都葛飾区および秋田県大館市・田代町に在住の65歳以上の要介護高齢者 (施設サービス利用者を除く) を対象に訪問面接調査を行い, それぞれ695人, 381人から回答を得た (回収率は各65.8%, 75.0%). 日本語に訳した10項目のNSIを含め, ADL, IADL, それぞれの「もっと手助けがほしい」項目数, 手助けしてくれる人数, MMSE, CES-D, PGCモラールスケール, 健康度自己評価, 同居家族からの孤独感, 介護者の負担, 介護者との関係, 毎月のやりくり, 介護費用の負担感などを調べた. 地域間,「低栄養リスクあり」と「リスクなし」の比較検定,「低栄養リスクあり」と「リスクなし」の2値を従属変数とするロジスティック回帰分析, 信頼性係数αの算出を行った. 結果: 健康度自己評価とNSI得点は両地域で強い関係を示した. 10項目のNSI足し上げ得点 (NSI-10), 原著に基づく重み付け得点 (NSI-21)で, それぞれ3点, 6点以上を「低栄養リスクあり」としてロジスティック回帰分析を行うと, NSI-10では地域 (葛飾で高い), 要介護者が女性, 健康度自己評価が低い, CES-Dが高い, が「低栄養リスクあり」の有意な要因であった. NSI-21の「低栄養リスクあり」に関連した要因は, 地域 (葛飾で高い) と同居家族人数の少なさ, 毎月のやりくりが苦しい, CES-Dが高いであった. いずれの場合も, CES-Dの替わりにPGCモラールスケールを投入してもまったく同じ結果が得られ, いずれも「低栄養リスクあり」ともっとも強い関連が認められた. 結論: 主観的健康状態が低栄養リスクと関連することが示唆された.

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