日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者における痙攣発作の検討
平井 俊策森松 光紀吉川 政己村松 睦細谷 甫
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1972 年 9 巻 5 号 p. 285-290

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抄録

老年者における痙攣発作の原因疾患を検討するため, 東大老人科の過去9年間の外来入院患者中40才以上の4,834症例, 群馬県榛名町久留馬地区における脳血管障害疫学調査例中過去3ヵ年間に脳卒中発作を起こした70例, および榛名荘病院において過去30ヵ月間になされた40才以上の105連続剖検例につき, 40才以後に初発した痙攣を有する例を調べ原因疾患や痙攣発作の特徴などを考察した.
その結果1) 脳血管障害に基づく痙攣がもっとも多く過半数を占めとくに脳血栓例が多かった. これに次いで脳腫瘍によるものが多く, 全痙攣症例の約1/3を占めた. 2) 脳血栓症例中で痙攣を起こすものの頻度は約2%で, 剖検例のみについてみると6%であった. これに対し, 脳腫瘍中痙攣を起こすものの頻度は約30%ではなはだ高率であった. 3) 脳血栓による痙攣症例は脳卒中発作の前または発作時に痙攣がみられる early seizure と, 卒中発作後2週間以上経てから痙攣を起こす late seizure に分けられるが, 後者の場合卒中発作から痙攣初発までの平均期間は6ヵ月であった. 4) 脳血栓による痙攣症例は, いずれも皮質を含む広範な軟化例であり, 右片麻痺症例はすべて失語症を伴い, 頸動脈撮影を施行した例では内頸動脈または中大脳動脈基部の閉塞がみられた. 5) 脳出血による痙攣は出血例の10%程度にみられたが, いずれも卒中発作時に起こり生命予後不良の一徴候であった. 6) 脳動脈硬化以外に原因となる疾患のみられない症例が少数みられたが, これが原因かまたは晩発性てんかんと考えるべきかはさらに今後検討が必要と思われる.

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