遺伝学雑誌
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羊齒植物の細胞學的研究
XVI. ウラボシ科植物の生活環中に於る色素體及びコンドリオゾーム
湯淺 明
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1939 年 15 巻 2 号 p. 47-61

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抄録

1) 本研究に於ては, ウラボシ科植物細胞の細胞質中で, やぬす緑水溶液で生體染色される小體をコンドリオゾームと定義し??攀??椀?? (Sorokin 1938, 參照)。
2) 生活環中の凡ての階程に於て, 色素體とコンドリオゾームとは, 互に區別出來, 且つ常に相並んで存在する。コンドリオゾームは, やぬす緑で生體染色されるが, 色素體は染色されない。
3) 色素體及びコンドリオゾームは, 自己の分裂によつてその數を増加する。
4) 一般に色素體はコンドリオゾームより大形であるが, 時には著しく小形となつてコンドリオゾームに似てくることもある。色素體が小形になつた時でも, やぬす緑水溶液によつて兩者を區別することができる。
5) 胞子中には數個の色素體 (白色體) と多數のコンドリオゾームとがあり, 後者は粒状, 小棒状或は數珠状で, 小形である。
6) 胞子の發芽する前に, 白色體は葉緑體に變る。前葉體細胞中には, 多くの大形葉緑體と小形のコンドリオゾームとがある。
7) 造精細胞中には, 數個乃至10個の小形白色體と多數のコンドリオゾームとがある。
8) 精細胞中には, 數個乃至10個の小形白色體と多數のコンドリオゾームとが含まれてゐる。精子が完成に近づくと, 白色體は大形となつて, その内部に澱粉粒を蓄へる。
9) 精子の色素體とコンドリオゾームとは, 精子の活溌な運動中に棄去られる。
10) 若い卵細胞中には, 數個乃至10個の大形, 球形の白色體と多くの小形の粒状, 小棒状或は數珠状のコンドリオゾームとが見られる。完成した卵細胞中では, コンドリオゾームは凡て粒状である。
11) 新植物體の色素體とコンドリオゾームとは, 卵細胞のそれのみから由來する。
12) 造胞體の細胞中には, 多くの大形葉緑體と小形粒状, 小棒状或は數珠状のコンドリホゾームとが含まれてゐる。地下莖, 根及び假根の場合には, 細胞中に白色とコンドリホゾームとが見られる。
13) 胞子形成過程中に, 胞子母細胞は, 小形白色體とコンドリホゾームとを含んでゐて, これらは減數分裂後期に隔膜附近に集められて, 結局, 胞子細胞中に分配される。
14) 胞子細胞中には, 數個の白色體と多數のコンドリオゾームとが含まれてゐるが, 胞子細胞が完成に近づくと, 白色體は次第にその大きさを増す。

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