遺伝学雑誌
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火傷蠶 (Bu) の致死と遺傳子發現の時期
有賀 久雄
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1939 年 15 巻 2 号 p. 62-68

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抄録

(1) X線を照射したる場合に現れた優性突然變異火傷蠶の遺傳子Buに關してホモの個體の致死作用に就て記載した。
(2) 火傷蠶相互交雜の胚子を觀察した結果1蛾の總卵數の約1/4が反轉せずに死滅することが明になつた。この異常胚子は反轉せずに剛毛が形成せられるまで發育して遂に死滅するに至るのである。
(3) 反轉せざる異常胚子に於ては背面の發育が著しく不完全であり, 羊膜は最後まで癒着せず, 中部消食管は外の卵黄質に連絡し, 而もその連絡する部分には大きい孔が開いてゐる。
(4) Bu遺傳子に關してホモの作用の發現する時期は最長期と反轉期との間であつて, 口腔及肛門陷入が發生し始めて後腹面の羊膜が前後左右より背面の中心に向つて叢合する時期である。この時期に背面の羊膜の發育が著しく不完全となる。
(5) Buに關してヘテロの個體に於ては正常胚子と略同樣に羊膜の形成が行はれ, 從つて反轉現象を行ふのであつて, その作用の發現の時期を組織學的に決定することは困難であつたが, 恐らくホモの作用が發現すると同時期であらうと推察される。

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