1939 年 15 巻 2 号 p. 91-95
花粉管内で起る雄原細胞の分裂は, これ迄屡々正常な有絲分裂ではないものとして取扱はれて來たが, 筆者の固定染色の方法及び生體連續觀察の方法による研究の結果, 少くとも Crinum 及び Hippeastrum の培養花粉管では, 通常の體細胞分裂と同樣紡錘體機構により核分裂が行はれ, 後, 細胞板が形成されて遂には2娘細胞の分離が起る事が明にされた。紡錘體機構を攪亂して有絲核分裂に異常を與へるものと稱せられるコルヒチンを作用させた結果によれば, 花粉管中の核分裂はやはり阻害されて, 紡錘體機構の破壞された樣な外觀を呈する。この事實は上記の花粉管内核分裂の紡錘體機構説を支持するものである。但しコルヒチンの作用は單一なものではなく, 種々の他の生理的な影響も含むものなのであるから, 猶愼重な檢討, 特に細胞生理學的な方面からの檢討を必要とする。