遺伝学雑誌
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稻の矮型及び常型間に於ける穗の發育の比較的研究
中山 包
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1940 年 16 巻 4 号 p. 139-148

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抄録
1. 穗と花の短小なる矮型稻3種 (AAbb, aaBB 及び aabb) と常型稻(AABB)との間で穗と花の分化生長の過程を比較した。
2. 播種後37日頃迄は何れの因子型に屬する植物の穗も未だ分化を開始せず, その生長は緩慢で且つ各因子型の植物間で大さの差異が殆んど認められない。
3. 44日經つと大型の2型 (AABB, AAbb) のものは急激に生長が活発となり第一次分岐を出すが, 矮型の2種では未だ分化せず, その大さも前と大差ない。
4. 50日近くになると凡ての型で早くも第二次分岐が完了する。而してAABB,AAbbの2型では第二次分岐上の花で既に内外兩穎の分化が見られるが, 他の2型では此の分化は未だ明確でない。
5. 60日以前に凡ての型で花の内部の分化が完全に終る。葯, 花絲, 胚珠, 鱗皮等が明瞭に識別される。
6. 上記の時期では矮型の穗長は常型のものよりも著しく短いに反し, 穗上のよく發達した花の大さは各因子型の植物間に大差がない。これは矮型で穗自身の生長抑制は發育の稍々早期に起るに反し, 内外兩穎の大さの差は其の生長期 (この品種では播種後約60日以後出穗迄) に到つて始めて見られるからである。
7. 穗の原基を構成する細胞の大さは穗の發育時期の早晩及び各因子型の植物間に大差が無い。
8. 發育初期に就て見れば, 穗の分化生長に關する常型及び矮型間の相違は, 常型及びこれに近き生長型のものは他の矮型に較べて細胞分裂の旺盛期が若干早く開始されること, 及び其後の生長期に於て細胞分裂がより頻繁に起り細胞數が増加し, 從つて組織の分化が早まるため起るものと考へられる。
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