損害保険研究
Online ISSN : 2434-060X
Print ISSN : 0287-6337
<論文>
地震保険,夫婦のコンフリクトおよび世帯内交渉力に関する実証研究
古村 聖
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2016 年 78 巻 1 号 p. 51-76

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抄録

 近年の家族形態の変化に伴い,世帯を一人の個人として分析を行う単一家計モデルの立場を離れ,世帯内に意思決定主体として複数個人の存在を許容するNon-unitaryモデルのもとで消費者の行動を分析する重要性が指摘されている。本研究では,独自に行ったアンケート調査「家計管理と生活に関するアンケート」をもとに,世帯の損害保険需要の意思決定プロセスを明らかにすることを目的とした。具体的には,損害保険の中でも,地震保険に関する需要行動をNon-unitaryモデルの一つである家計内交渉モデルに基づいて分析を行った。主な結論は二つである。一つは,地震保険需要について妻が主導権を握った時に,加入する確率が高くなる。このことは,夫と妻(男女)で地震保険に対する選好が異なることを意味している。二つ目は,夫婦のうち,相対的に教育水準が高い,また交際当初の貯蓄残高が高い者が地震保険需要に対して主導権を握る傾向が強い。この結果から,地震保険に対する需要行動に関して,経済力のある者が世帯の意思決定において主導権を握ることを想定する家計内交渉モデルによるアプローチが有用であることが示唆される。

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