損害保険研究
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Print ISSN : 0287-6337
<研究ノート>
雇用慣行賠償責任保険の実用的価値
山越 誠司
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2017 年 79 巻 3 号 p. 145-176

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抄録

 わが国で雇用慣行賠償責任保険(EPL保険)は,それほど普及していると思えない。しかし,働き方改革など雇用形態が多様化し,外国人労働者も増加傾向にある。また,多くの日本企業は海外進出を果たし,現地の従業員を現地の法令や実務に基づいて人事労務管理する必要がある。そのように考えると,わが国の企業が抱える雇用慣行賠償責任リスクを小さく見積もることはできない。EPL保険は,その雇用慣行に関するトラブルに焦点を当てた特殊な保険であり,実用的な価値を保険者による防御義務に見出すこともできる。

 本稿においては,EPL保険の射程とする不当解雇,雇用差別,ハラスメントの各国の状況を概観し,CGL保険やD&O保険では対応しきれないEPLリスクに対するEPL保険の必要性を確認するとともに,保険者の防御義務の実用的価値を再確認することにしたい。

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