2018 年 79 巻 4 号 p. 119-139
自動車保険の新たな担保種目として1998年10月から販売が開始された人身傷害保険は,販売開始から20年近くを経過した現在,広く普及する一方で,様々な論点を生み出している。近時問題が顕在化しつつあるのが,約款に定める損害額算定基準に基づき算定した被保険者(交通事故の被害者)の損害の額が保険金額を超過するため,人身傷害保険の保険会社が,保険金額に上乗せする形で自賠責保険金を立替払した場合(狭義の「人傷一括払」)の対応である。
本稿では,「人傷一括払」を広義と狭義に分けて整理し,狭義の「人傷一括払」が行われた事案について,どのような点が問題となっているのかを紹介し,解決の方向性について検討を行う。