損害保険研究
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<研究ノート>
損害保険ダイレクト事業に関する考察
大島 道雄
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2021 年 83 巻 3 号 p. 1-54

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抄録

損害保険の通信販売(以降ダイレクト販売とする)が認可され四半世紀が経過した。認可当時は保険の自由化・規制緩和の動きの最中であり,ダイレクト販売は保険料の低廉化や販売方法の多様化をもたらすものとして大いに歓迎された。また,自動車保険ダイレクト販売開始当初はかなりのシェアをダイレクト社が占めるのではないかとも予想されていた。しかし,ダイレクト社の自動車保険のシェアは2019年度末保険料ベースで8%を超える程度であること等から,ダイレクト事業は積極的に評価されているとは言い難い現状である。また関連論文も極めて限られている。筆者はこのような現状に対し,ダイレクト社の業績を詳細に分析しダイレクト事業の現時点での評価を行った。その結果,ダイレクト社は一貫して収入保険料およびマーケットシェアを拡大させ,件数ベースでは対象市場の15%を超えるシェアを獲得しており,また既に3メガ損保を凌駕するほどの引受成績を達成している企業が出現していることが判明したこと等から,既にダイレクト事業は確固としたビジネスモデルを築き上げていることを確認した。さらに,損害保険事業を取り巻く環境が大きく変化(例えばCASE問題など)する中,これらの動きが損害保険事業に与える影響を考察し,現在損害保険市場は変革期にあり,この新たな状況はダイレクト系損保にも,従来には見られなかったマーケットをめぐる多面的な活動を展開するチャンスとなり得ることを明らかにした。 なお,損害保険市場を個人市場と企業市場に区分する必要性については,ダイレクト事業を考察する場合に避けて通れない問題であり,本稿で提案を行った。

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