2022 年 84 巻 2 号 p. 111-128
2021年6月,コーポレートガバナンス・コードが改訂され,「プライム市場」の上場企業に関しては,モニタリング機能強化の観点から,取締役会における独立社外取締役比率が3分の1以上に引き上げられた。その一方で,企業の内部者のみが知り得る企業特殊的な情報が意思決定上の重要性を有する場面では,企業の内部者・外部者間の情報の非対称性が深刻となり,社外取締役によるアドバイス機能が低下する可能性も指摘されている。本論文では,企業特殊的な情報の重要性が高いと考えられる研究開発活動に着目し,そうした活動が活発な企業において,社外取締役比率と企業の収益性との関係について実証的に検討する。実証分析の結果,研究開発活動を活発に行う企業において,社外取締役比率が高いことが企業の収益性に負の影響を与える可能性が示唆された。