損害保険研究
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Print ISSN : 0287-6337
<研究論文>
ドイツD&O保険の自己保有規制
牧 真理子
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2022 年 84 巻 3 号 p. 49-66

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抄録

令和元年会社法改正は,D&O保険の契約締結における手続の明確化等を目的として,D&O保険に関する規定を新設した。これを契機として,改めてD&O保険のあり方について検討する必要があると考える。本稿では,日本と同時期にD&O保険を受容したドイツ法について参照し,D&O保険における取締役の損害の自己負担額に関連する自己保有規制について検討する。ドイツの自己保有規制は,2009年株式法において,取締役に一定の経済的負担を課すことにより,取締役のモラルハザードを抑止する行動制御を主な目的として規定された。しかし,この立法趣旨に反対する議論は当初から存在し,さらに取締役の私的財産への影響の観点から自己保有に個人契約で責任保険を付けることが実務上認められているため,当該機能については十分な効果があるとはいいにくい。この点を含めて自己保有に関する学説状況を分析し,D&O保険のあり方についての検討を試みる。

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