2023 年 85 巻 3 号 p. 155-171
本稿では,非期待効用理論の1つである後悔理論に基づいた経済モデル分析を展開することによって,地震保険加入にかかる検討を行う。なお,本稿における分析から得られる主たる結論は,以下の2つにまとめることができる。1つめは,後悔の観点を考慮した場合,考慮しなかった場合に比して,地震保険に加入する可能性が高まることである。ゆえに,「地震保険に入らないと後で後悔する」と広報するなどによって,後悔の存在を個人に認知させることが,地震保険の加入促進にとって有効な手法となる。2つめは,地震保険制度における上限付保率の引き上げが地震保険の加入促進に与える影響は一概に言えないことである。その中において,後悔の存在は,上限付保率の引き上げによる地震保険の加入促進を阻害する要因となる。