抄録
前立腺癌患者では,血清尿酸値が低値を示すことが多い. この意義を探るために,前立腺肥大症との比較を行なった. 次に,この結果を補足する目的で,前立腺癌に合成発情ホルモン(ホンバソ)投与を行なった際の,血清尿酸・クレアチニン及び血清蛋白(α1-AG,α1-AT,Cp,AT-III及びα2-M)の比較検討を行なった. 結果は次の如くである.
(1)前立腺癌と肥大症において,血清尿酸値及びクレアチニン値は,前者が有意に低い値を示した.
(2)ホンバソ投与により,血清尿酸値の減少傾向がみられた. (3)前立腺癌と他の泌尿器系腫瘍との比較で,α1-AG・AT-IIIの低下,Cpの増加傾向がみられた.
以上の所見は, 前立腺癌における女性ホルモン優位環境の存在を示唆しており, 発癌との関連について若干の文献的考察を行なった. また,この女性ホルモンの状況把握のために,血清尿酸値が使えるように思われる.