プリン・ピリミジン代謝
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糖尿病に合併した腎性低尿酸血症の1例
佐々木 紀仁久留 一郎石河 利一郎浦辺 啓太吉田 明雄小竹 寛真柴 裕人武田 倬
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1991 年 15 巻 1 号 p. 9-14

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抄録

糖尿病に合併した持続性低尿酸血症を経験し,薬理学的に本例における尿酸輸送機構の障害部位を,SteeleとRieselbachの仮説に基づいて検討し,ヒポキサンチン(HX)キサンチン(X)の輸送についても検討した. 症例は74歳女性で糖尿病とこれに合併した持続性低尿酸血症を呈していた.尿酸クリアランスおよび尿酸・クレアチニンクリアランス比の亢進を認め, イノシン(1,600mg/day)負荷により尿中尿酸,HX,Xの上昇を認め,腎性低尿酸血症と診断した.尿酸排泄は,ピラジナマイド(3.0g)負荷またはベンズブロマロン(200mg)負荷に反応せず,プロベネシド(2.0g)負荷にて亢進した.HX排泄はピラジナマイド負荷に反応せず,プロベネシド負荷により亢進し,ベンズブロマロン負荷により抑制された.X排泄は,プロベネシド負荷により亢進し,ベンズブロマロン負荷に無反応であった.以上により本例においては,少なくとも尿酸の分泌前再吸収障害の存在と不完全な分泌後再吸収障害が存在すると考えられ,オキシプリンについても同様の異常が存在すると考えられた.なお,本例は,10年前に正常血清尿酸値であったことが判明しており,七里らの提唱している分泌亢進型腎性低尿酸血症とは異なる機序による糖尿病性低尿酸血症と考えられた.

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© 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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