抄録
(1) 現に一般にゴム中鑛物質定量に使用されてゐる石油系溶劑に於いて其の溶解力の不充分な點を補はむが爲めに溶解促進劑としてマーキヤプトベンゾチアゾールのカリ鹽を使用して有效なことを發見した。同時に之が沈降分離の作用も阻止することを知つた。
(2) 前記の如く石油系溶劑に依るゴム中鑛物質の定量に於いて、任意の時期に鑛物質の沈降分離を行はしめむが爲めに分離促進劑として、純マーキヤプトベンゾチアゾールを使用して有效なことを發見した。
(3) ゴム試料1g秤取し固形パラフヒン10gを溶劑とし180°にて加熱し、前記の溶解と分離の兩促進劑の使用量を變更し、その最適量を求めたるにマーキヤプトベンゾチナゾールのカリ鹽0.04g: 純マーキヤプトベンゾチアゾール0.02gなる數値を得た。
(4) 前記の實驗にて溶解に要する時間と完溶後分離迄に要する時間とを測定した。
(5) 前掲の實驗にて確立されたる分析法の操作を述べ、本法に依る分析値を普通のパラフヒン法及活性テレビン油法に依る分析値と比較對照し、其の正確度を立證した。
(6) 本分析法に依る鑛物質の溶解逃失量を他の分析法の場合と比較して、誤差の少いことを裏書きした。
(7) マーキヤプトベンゾチアゾールのカリ鹽が溶解促進效果あることを裏書きせむが爲めに、之を促進劑として過分に加へたるエボナイトを240°の流動パラフヒンに迅速に溶解せしめるを得たる興味ある實驗を行つた。