日本ゴム協会誌
Print ISSN : 0029-022X
ゴムに対する遊離ラジカルの作用
(第20報) 新しい早期加硫防止剤の性能に対する量子論的考察
古川 淳二小谷 悌三山下 晋三
著者情報
ジャーナル フリー

1961 年 34 巻 2 号 p. 85-88

詳細
抄録

当研究室において発見された一連の早期加硫防止剤, すなわち種々の芳香族スルフェニールクロライド化合物, およびチオカルボニールパークロライドの反応機構について最高被占軌道エネルギー準位と, 早期加硫防止時間との関係, および電子密度, 反応性尺度等より考察を加えた.
単純LCAO-MO*1理論より上記化合物について検討した結果, π電子の最高被占軌道エネルギーεh0と各種早期加硫防止剤配会物のムーニー値10上昇に要する時間t10から無添加試料のそれ (t0) を引いた時間(t10-t0) の対数との間に直線的な関係があり, 最高被占軌道エネルギー準位が安定な程早期加硫防止能の大きいことがわかった. しかしあまり安定化すると抑制剤型早期防止剤としての現象が顕著になるものと思われる.
各種メルカプタンは早期加硫防止作用を有しておらぬがスルフェニールクロライドは早期加硫防止能を有することより, 塩素の置換により硫黄又は塩素がその能力を有するものと考え, それらの電子密度及び反応性尺度を或め, 更に実験結果と考え合せて検討した. その結果「早期加硫防止剤の反応は加硫促進剤と, 硫黄よりできた陽イオン性を少し持つラジカルが, 早期加硫防止剤の硫黄または塩素に働いて, 結合を作り安定化する」と考えられるに至った.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本ゴム協会
前の記事 次の記事
feedback
Top