日本ゴム協会誌
Print ISSN : 0029-022X
自動車用タイヤトレッドの破壊耐性のレオロジー的研究 (その1)
破断スペクトルのみを指標とする取り扱い
草水 純男広瀬 善清二宮 和彦
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1970 年 43 巻 5 号 p. 385-397

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抄録
自動車用タイヤのトレッド部の破壊耐性に関する主要性能指標として破断スペクトルを取り上げ, まず現在市販されている商品についてどの程度性能最適化が進行しているかを調べた. 実際には乗用車用およびトラックバス用タイヤのうちの代表的なものを選びだし, 形状や構造さらには販売価格も大同小異であるような国内外各社製のタイヤトレッドの破断スペクトルを実験的に求めて比較した. その結果, 使用目的が同じであるような試料群については, 各社製品の破断スペクトルの形状は大同小異であり, 性能最適化はかなりの程度進行していると判断された. 次に乗用車用のタイヤトレッドの破断スペクトルの平均的形状とトラックバス用のそれとでは, 高温度側の位置および形状について顕著な相違のあることを指摘した. このことに関連する従来の知見を総合して考察した結果, この形状の相違はトラックバス用タイヤについて, 重荷重使用状態における破壊耐性を向上させるための材質の最適化努力の結果実現したものであるとした. また衝繋破壊耐性について, 通常の使用条件では現在市販されている乗用車用タイヤのトレッド部は材質的に過剰品質気味であると思われることを指摘した.
破断スペクトルの数式表示法を利用すれば, 重荷重使用状態における破壊耐性は3個のパラメタによって計量化できることを示し, 乗用車用およびトラックバス用トレッドについての実験データを解析して, 実際には3個のうちTmaxだけが性能改変制御用指標となっていると表現できるような内容の, 材質改変による最適化過程が進行したことを明らかにした.
最後にTmaxにたいする使用ポリマーおよび配合加硫処方よりの寄与の問題について論じた.
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© 一般社団法人 日本ゴム協会
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