日本ゴム協会誌
Print ISSN : 0029-022X
ポリエステルタイヤコードの昇温時における強力および微細構造変化に関する研究
タイヤコードの熱変化に関する研究 (第6報)
福原 節雄鈴木 康雄表 重夫天田 和宣
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1971 年 44 巻 12 号 p. 1015-1019

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抄録

加熱時にポリエステルタイヤコードの強力が低下する現象を解明するために, 市販ポリエステルタイヤコードを緊張下で1時間, 湿 (188℃) および乾 (220℃) 熱処理, 冷却後, それらの試料を昇温時 (乾熱) において強力, 広角および小角X線回折を測定し, 次の結果を得た.
(1) 強力は温度が上昇するにつれて低下した.比較的比重が高い (湿熱処理) ポリエステルタイヤコードの温度上昇に伴う強力の低下は, 比重が低い (乾熱処理) ポリエステルタイヤコードの強力低下よりも少なかった.
(2) 結晶の (100), (110), (010) 面間隔は温度の上昇と共に増加し, 結晶格子力は弱まると考えられるので, 応力によって鎖状高分子が結晶を滑り抜けやすくなると推定された.
(3) 電子密度差は温度の上昇につれて増加した.
(4) 緊張下の配向度は温度上昇につれて変化を示さなかった.
(5) 極限粘度数は70℃から220℃ (乾熱) で処理した試料では変化を示さなかった.
これらの結果から, 昇温時におけるポリエステルタイヤコードの強力の低下は結晶格子や非結晶領域中の分子鎖の滑りによるものと推定した.

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