抄録
クロロプレンゴム(CR)のスコーチ安定性と耐熱性に特徴を有する加硫剤を検索する目的で, 6-置換-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールスルフェンアミド(RTDSA)の加硫反応性と加硫物の耐熱老化性を検討した. RTDSAは硫黄及びポリスルフィド化合物, レゾルシン, ジメチルグリオキシムなどのスルフェンアミド基分解剤とMgOの共存下でCRの加硫剤として作用する. しかしながら, GタイプのCRは分子鎖中にポリスルフィド鎖が含まれるので分解剤の共存を必要としない. 一般に, RTDSAのスコーチ安定性はその構造や6-置換-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(RTD)の性質の影響を受けるが, 2-メルカプトイミダゾリン(ETU)より優れていた. RTDSAのスルフェンアミド基はこれらの分解剤の作用により, 分解してチオール基を生成し, 結果としてRTDを放出することが, 架橋鎖のFT-IRスペクトル分析及び加硫物の抽出残査の液体クロマトグラフによる分析から明らかになった.
RTDSAにより加硫されたCR加硫物はETUのそれより耐熱老化性に優れていたが, 圧縮永久ひずみは若干劣った.