抄録
NR-黄銅接着物の水劣化後のはく離強度を硫黄添加量の関数として種々の因子から検討し, 接着物の新しい水劣化機構を提示した. 接着物の耐水性は最適な硫黄添加量のとき優れており, 硫黄添加量が接着層の耐水性と関係すると考えた. 加硫中にアミン化合物を放出するスルフェンアミド系加硫促進剤は接着物の水劣化性を促進し, 放出しないチアゾール系加硫促進剤は高い耐水性を示した. 塩基性が強く拡散しやすいアミンを放出する促進剤ほど接着物の水劣化性を促進した. ステアリン酸はZnO添加量が多いほど耐水劣化性に影響しないが, 少ないと耐水劣化性は低い. コバルト塩は接着物の耐水性に対して, 最適硫黄添加量を高硫黄側にシフトさせる. 未研磨黄銅は研磨黄銅より耐水性に劣る接着物を与える. 黄銅の亜鉛含有量が高いほど, また結晶粒度が小さいほど耐水性に優れた接着物を与える. 接着物の水劣化後のはく離面を観察し, その表面分析をした結果破壊は黄銅の表面層で起こっていることが明らかとなった. 以上の結果から接着物の水劣化はアミソ-応力腐食割れ機構によって起こる仮説を提示した.