1992 年 65 巻 9 号 p. 542-549
新規ポリエステルグリコールであるポリ(β-メチル-δ-バレロラクトン) (PMVL)系, ポリ(3-メチルペンタメチレンアジペート) (PMPA) 系橋かけポリウレタンの物性への水分子の影響を調べ, 汎用ポリエステルグリコールであるポリ (カプロラクトン) グリコール, ポリ (ブチレンアジペート) グリコール系橋かけポリウレタンとの比較を行った. 吸水挙動の観察とパルスNMR測定より, 新規ポリエステルウレタンの吸水量は汎用系より少なく, 水分の束縛の程度は乾燥試料のそれとあまり変わらないことがわかった. また, 動的粘弾性や応力-ひずみ関係の測定から, その水分子はポリウレタンに対して可塑剤として作用し, 鎖の凝集構造を弱めるが, その程度は汎用系のほうが大きいことが示唆された. 50, 70, 100°Cの水中での網目の力学物性の経時変化は, PMVL, PMPA系ポリウレタンのほうがPCL, PBA系ポリウレタンより少なかった. 網目の水中での劣化を化学緩和の手法を用いて評価した結果, 劣化の見かけの活性化エネルギーは54~63J/molで, 新規ポリエステルウレタンと汎用ポリエステルウレタンとの差はわずかであり, これは橋かけ点であるアロハナート基の切断の寄与が大きいためと考えられた.