日本草地学会誌
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衰退グラス草地に対するサブクローバ導入の改良効果
山田 豊一渡辺 亀彦高柳 謙治
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1967 年 13 巻 4 号 p. 234-247

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抄録

生産力の低下したオーチャードグラス単独草地に簡易な手段でサブクローバ2品種と,比較としてのラジノクローバを導入し,無導入区と対比した。その結果,クローバ導入区ではクローバの収穫が得られたばかりでなく,オーチャードグラスの生育が助長され,その収量も無導入区をはるかに上回り,とくに利用二年目においては2倍以上に達した。ラジノクローバは利用二年目の夏に夏枯れして消失したが,サブクローバはなお植生を維持し,一年生であるけれども,晩春地中に残された多数の種子が休眠して夏を過し,初秋の降雨によって発芽するので,高い植生持続性を示した。クローバ導入の同伴グラスに対する増収効果は土壌の無機態窒素の増加によることを認めた。従来,ラジノクローバはオーチャードグラスなどと組合わされて混播草地の主要草とされてきたが,しばしば利用頻度の高い場合には優占して家畜の失調を起こしやすく,また時には逆に夏枯れして消失し,草地の量的,質的向上をさまたげる。これに対してサブクローバはwinter annualであって多年生グラスと競合する期間が限られ,また夏枯れの心配もない。したがって,サブクローバを衰退したグラス草地に導入することにより,クローバ優占をもたらすことなく,更新効果をあげ,それを長年にわたって持続できるものと考えられる。

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© 1967 著者
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