日本草地学会誌
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草地におけるラン藻による窒素固定
吉田 重方
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1984 年 30 巻 2 号 p. 145-150

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抄録
アセチレン還元法を用いて,名古屋大農場のシバとヤハズソウの繁茂する野草地表面に生育するNostocの窒素固定能を調査した.生育するNostocの単位面積当りの窒素固定能は,そこに生育するヤハズソウと同程度の窒素固定能を示したが,Nostocの単位新鮮重当りの窒素固定能はヤハズソウ根の約1/10,ヤハズソウ根粒の約1/800程度であった。また,Nostocの窒素固定能は光の存在によって促進され,水分含量25%において最大値を示した。一方,乾燥によって窒素固定能を示さないNostocに潅水すると,上記の固定能がすみやかに回復することが観察された。これらの結果から,ラン藻の繁茂する草地では,草地への窒素のインプットに上記のラン藻による窒素固定が少なからず関与していること,および,その機能の発現には草地の水分環境が最も重要な要因として働いていることが推察された。
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© 1984 著者
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