日本草地学会誌
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クズの乾物生産ならびに葉面積の拡大に関する研究 : III.越年茎の節における当年茎の発生
津川 兵衛トーマス サセック丹下 宗俊西川 欣一
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キーワード: , クズ, マメ科,
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1987 年 32 巻 4 号 p. 337-347

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抄録

本研究では,越年茎の節にある芽からの当年茎の出現時期,越年茎の節当り当年茎発生数,当年茎の枯死率および当年茎発生に対する3つの芽の貢献度のちがいのようなクズの茎葉生産に関連する最も基本的な問題について検討した。本研究結果は六甲山系山麓部に当る神戸市東灘区本山町岡本北畑にあるクズの自然群落から得られた。越年茎の芽からの当年茎の発生は4月上旬から6月上旬まで続いたが,当年茎数の80%は4月末までに現われた。越年茎の節当り当年茎発生数は,維管束環数1環の越年茎では5月から10月にかけて0.61から0.15まで次第に低下した。2環の越年茎ではそれは調査期間を通じて0.11〜0.18の範囲にあり,はっきりした季節変化は認められなかった。3環以上の越年茎の節当り当年茎発生数は前2者よりかなり低かった。越年茎の節の3つの芽のうちどれが当年茎を発生したかにより節は7つのタイプに分けられた。当年茎発生については中央の芽よりも左右の芽の貢献度が大であった。当年茎の枯死率は1環の越年茎では7月から10月にかけて上昇し続けた。2環の越年茎では枯死率は1環の茎にくらべて低かった。3環以上の茎では当年茎の枯死は認められなかった。以上のことから,当年茎は主に維管束環が1環の越年茎の節にある芽から発生し,3つの芽のうち中央の芽よりも左右の芽の方が当年茎発生に重要な役割をはたしていると結論される。

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© 1987 著者
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