日本草地学会誌
Online ISSN : 2188-6555
Print ISSN : 0447-5933
ISSN-L : 0447-5933
低湿重粘土水田の転換畑における飼料作物の生育特性 : IV.転換後の年数とトウモロコシ品種の生育・養分吸収特性
青田 精一渡辺 好昭
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1987 年 32 巻 4 号 p. 354-360

詳細
抄録

転換年次の異なる圃場で栽培したトウモロコシの生育相,養分吸収とその品種間差を1981年に検討した。試験方法は転換1年目と転換8年目の圃場でP3715,タカネワセ,G4553の3品種を供試して,窒素施用量を標準,多窒素(1.5倍),無窒素の3水準で栽培し,抽雄期と黄熟期に刈取って生育量を調査するとともに,器官別のT-N,P,K,Ca,Mg含有率を測定した。転換1年目の無窒素区では生育が極めて悪かったので,標準と多窒素区で検討したところ,雌穂長,雌穂重割合,TDN収量は転換1年目が8年目に比較して明らかに劣っていた(有意水準1%)。しかし稈長,稈径では有意な差はみられず,これをトウモロコシの生育期でみると,転換年次の差は,栄養生長期よりも登熟期で大きいと考えられた。特にタカネワセは他の品種に比べて葉数は多いが,転換1年目で枯葉数多く,雌穂長,雌穂重割合などの形質が著しく劣っていた。無機成分含有率は同化器官である葉では転換1年目が8年目に比較して低く,含有量も転換1年目でN,P,Kの3要素が特に少ないことが特徴的であった。品種間ではタカネワセが特異的で,N,P,K,Ca含有率は葉で低く,逆に茎でNを除くP,K,Ca,Mgが高かった。また窒素含有量は転換1年目では抽雄期よりも黄熟期で減少するなど,登熟期の養分吸収が他の品種と異なった。転換1年目無窒素区の生育が窒素施用区及び8年目無窒素区に比して極端に悪かったこと,また転換1年目で多窒素区の増収割合が転換8年目に比して大きいことから転換初期で施用窒素への依存度の高いことを確認した。

著者関連情報
© 1987 著者
前の記事 次の記事
feedback
Top